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未来見つめ続ける像 桂浜(産経新聞)

 【龍馬ゆかりの地を行く】

 高知市の観光名所を代表する桂浜。その海岸沿いの松林の間から、太平洋を見下ろす高台に高さ約14メートルの像がそびえている。坂本龍馬の像である。龍馬の功績をたたえる像は各地に点在するが、桂浜の像は郷里にあり、歴史的にも由緒があることから年中、龍馬ファンでにぎわう。

 桂浜は、龍馬にとって思い出深い土地だ。近くに義母の実家があり、幼少期には、生家近くを流れる鏡川から姉と舟をこいで遊びに行くなど、桂浜周辺には何度も訪れたという。

 そんな桂浜での龍馬像建立は大正15(1926)年、龍馬の生き方に心酔していた地元出身で早稲田大生だった入交好保さんの呼びかけで始まった。

 「龍馬の功績を示すような日本一大きな銅像を作る」

 同年8月、「坂本先生銅像建設会」を結成。2万円を目標に、県内の青年ら10万人から1人あたり20銭(当時のたばこ1箱分相当)を募ったという。

 当初、世間の反応は冷ややかだったが、活動を続けているうちに熱意が伝わり、目標を上回る約2万5千円(現在の約8千万円相当)に達した。

 像の制作は、詩人の高村光太郎の父、光雲の元で学んだ高知の彫刻家、本山白雲に依頼した。昭和3年5月に建立され、除幕式では、当時の田中義一首相らから祝辞が届くなど、大きな反響を集めたという。

               ×    ×

 その像も何度か危機にさらされた。

 第二次大戦中、あらゆる鉄や銅が徴集の対象となり、龍馬像も例外ではなかったが、軍部は「江戸末期に勝海舟に師事し海軍建設の計画を推進した龍馬は、海軍の創始者だった」と反対して、徴集を免れた。

 平成に入ってからは、経年劣化で像の腐食が進み、修復のため一時的に桂浜から撤去される事態に見舞われた。このときも、龍馬像を救ったのは、全国のファンから相次いだ寄付の申し出だった。

 1世紀近くにわたって大切に守られてきた龍馬像。だが、龍馬と桂浜のかかわりについてはいまだに不可解な点がある。幕末当時の桂浜は、龍馬像が立つ太平洋に面したエリアではなく、奥に入った浦戸湾のさらに内陸部を指したとされる。

 それなのに、なぜ桂浜に龍馬像が建立されたのか-。「米国・ニューヨークにある自由の女神に対照した」など諸説があるが、桂浜にある高知県立坂本龍馬記念館の学芸員、前田由紀枝さん(51)はいう。

 「『この場所しかない』というまさに直感で選ばれたのではないか。あの銅像があるからこそ、あそこがほんとうに龍馬に出会えるような場所になった。巨大な像を見て、人生を見つめ直す人も多い。龍馬は今でも悩みを聞いてくれる兄貴であり、友だちのような存在なのかもしれない」

               ×    ×

 龍馬の誕生日で、命日にもあたる11月15日には毎年、生誕地の碑前で「龍馬誕生祭」が行われている。31回目となった平成21年11月15日にも、全国から100人余のファンらが集まり、龍馬に思いをはせた。

 龍馬のおいの孫にあたる土居晴夫さん(86)も神戸から訪れ、「龍馬を愛する多くの人たちのおかげで誕生祭が続けられ、毎年出席させてもらっています」と感慨深げだった。

 各地のファンでつくる全国龍馬社中(橋本邦健会長)によると、ファン組織は増え続けており、いまでは国内外で132を数えるという。また、新たにオランダや台湾でも発足の動きがあるという。生誕祭実行委員長の内田荘一郎さん(61)は明言する。

 「新国家体制の基本方針を起草した船中八策や薩長同盟など大胆な発想は、現代社会にも通じる」 

 龍馬が暗殺されて140年以上が経過した。しかし、激動の幕末を身命を賭(と)して駆け抜けた志士は、いまなお輝きを失わず、今後も愛され続けることだろう。(おわり)

                   ◇

 「桂浜」 高知市南部の太平洋を望む海岸。土佐を治めていた戦国大名・長宗我部元親が桂浜北側の丘陵部に浦戸城を築き、土佐の中心地だった時期もある。現在は坂本龍馬像をはじめ、県立坂本龍馬記念館や桂浜水族館など観光施設が集まり、高知市を代表する観光名所として知られる。昔から月見の名所とされ、土佐民謡「よさこい節」にも詠われている。毎年、中秋の名月の夜になると「名月酒供養」が開催される。(加藤浩二)

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